事業資金を調達する際、金利が高ければ高いほど支払う利息も増加し、返済の負担が大きくなります。
返済計画を立てる上で無理のない範囲で資金を管理するためにも、金利の相場を把握しておくことは重要です。
そこで今回は、事業資金の主要な借入先と金利の相場について詳しく解説します。
併せて金利に影響を与える要因もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
主な融資先と金利の相場
以下に、主な融資先とその金利の相場をまとめました。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、政府系の金融機関で、特に民間金融機関からの融資が難しい事業者に対して支援を提供しています。
具体的には、小規模企業や中小企業、創業予定者や創業間もない事業者が主な対象となります。
金利は業種や事業規模によって異なりますが、おおよそ2%~3%前後とされています。
一定の条件を満たせば、金利が1%程度まで下がることもあり、民間の金融機関と比較しても有利な金利設定となっています。
信用保証付き融資
信用保証付き融資とは、信用保証協会に保証してもらった上で金融機関から融資を受けられる制度です。
返済が難しくなった場合には、信用保証協会が代わりに金融機関へ支払いを行います。
そのため、金融機関はリスクが低減し、金利が低めに設定されるのが一般的です。
金利の相場は1.5%~3.0%程度であり、保証料も0.1%~0.8%前後が一般的です。
プロパー融資
プロパー融資は、金融機関が直接企業へ資金を融資する制度です。
信用保証付き融資とは異なり、未回収リスクが金融機関側にあるため、審査が比較的厳しい傾向にあります。
ただし、審査の厳しさに見合った金利設定で、1%~3%ほどが相場です。
融資先の信用度や担保の有無により、金利が変動する場合もあります。
信用金庫
信用金庫は、特定の地域内の中小企業や個人事業主、地域住民を会員とする金融機関です。
基本的には会員のみ融資を受けることができますが、特定の条件を満たせば、会員外でも利用可能です。
信用金庫の金利はおおむね2%~6%程度となっていますが、業種や規模により異なる場合もあります。
ノンバンク
ノンバンクは、融資を専門とする金融機関で、預金を取り扱わないことが特徴です。
ノンバンクの金利は3%~18%と幅広く設定されており、企業の信用度によって金利が大きく変わることがあります。
ファクタリング
ファクタリングは、売掛金を現金化する手法であり、融資ではないため金利は発生しません。
ただし、ファクタリングには手数料が必要です。
ファクタリングには「2者間ファクタリング」と「3者間ファクタリング」があり、それぞれで手数料の設定が異なります。
- 2者間ファクタリング: サービス利用者とファクタリング会社の間で契約を結び、手数料は8%~18%程度
- 3者間ファクタリング: サービス利用者、売掛先、ファクタリング会社の三者間で契約を結び、手数料は2%~9%程度
契約前に手数料を確認することが推奨されます。
各融資の金利の相場
事業資金の借入先と金利の相場は次のとおりです。
日本政策金融公庫 | 2%〜3%程度 |
信用保証付き融資 | 1.5%~3.0%(保証料:0.1%〜0.8%程度) |
プロパー融資 | 1%〜3%程度 |
信用金庫 | 2%〜6%程度 |
ノンバンク | 3%〜18%程度 |
ファクタリング | 2者間:8%~18%、3者間:2%~9% |
金利に関する基礎知識
以下に、金利に影響する主な要因について解説します。
金利に影響を与える要因
金利は、返済期間、担保の有無、利用者の返済能力、金融機関の利益などに影響されます。
返済期間
返済期間が金利に影響を与える要素の一つです。
長期間にわたる返済になるほど、金融機関が抱える未回収のリスクが大きくなるため、その分金利が高くなる傾向にあります。
融資を受ける際は、返済可能な範囲で返済期間を設定することが重要です。
担保
担保の有無も金利に大きく影響します。
担保とは、返済不能に備えて提供する資産のことで、土地や建物、売掛債権などが対象となります。
担保を提供すれば、未回収リスクが軽減されるため、金利は低く抑えられる傾向にあります。
一方、担保がない場合は金融機関にリスクが生じるため、金利が高めに設定されることが一般的です。
返済能力
借入者の返済能力も金利に関係します。
返済能力が高いと評価されれば、金融機関としては貸倒れのリスクが低いため、低金利での融資が期待できます。
一方で、返済能力が低いと判断されると金利が上昇しやすくなるのです。
金融機関の利益
民間の金融機関は、融資で得られる利息が収益源です。
そのため、金利は金融機関の利益を確保する観点からも設定されています。
変動金利と固定金利
金融機関の金利は「変動金利」と「固定金利」のいずれかであり、どちらを選択するかで返済額に影響します。
変動金利は、借入期間中に金利が見直されるタイプで、通常は半年に一度金利が調整されます。
ただし、見直し後も毎月の返済額が即時に変動するわけではなく、返済額は5年ごとに再計算されます。
このため、金利が上昇すると総返済額も増加する可能性がありますが、金利が下がれば支払額が減少します。
固定金利は、契約時に設定した金利が借入期間中ずっと一定に保たれるものです。
返済計画を立てやすく、予算を確保しやすいのが特徴です。
固定金利には、契約から完済まで金利が変わらない「全期間固定金利」と、一定期間のみ固定される「当初固定金利」の2種類があります。
返済方法の違い
返済方法には「元金均等返済」と「元利均等返済」があり、どちらを選ぶかで返済額や利息負担に違いが出ます。
元金均等返済
元金均等返済は、毎月の元金の返済額を一定にし、その元金に対して発生する利息を合算して支払う方法です。
毎月の元金返済額が一定であるため、残高にかかる利息も次第に減少し、結果として総返済額が抑えられる傾向にあります。
ただし、返済初期には元金にかかる利息が大きいため、初めの負担が大きくなる点には注意が必要です。
元利均等返済
元利均等返済は、毎月の返済額を元金と利息を含めた一定額に設定する方法です。
返済額が一定なので返済計画が立てやすいのがメリットです。
しかし、元金均等返済に比べて利息が多く含まれるため、総返済額がやや高くなる傾向にあります。
利息の計算方法
金利には「利息制限法」による上限が設けられています。
- 借入金額が10万円未満の場合:上限金利20%
- 借入金額が10万~100万円未満の場合:上限金利18%
- 借入金額が100万円以上の場合:上限金利15%
利息は借入前に確認すべき重要な項目で、計算式は次の通りです。
借入残高 × 金利 ÷ 365日 × 借入日数
たとえば、50万円を年利15%で30日間借りた場合、1か月の利息は約6,164円になります。
うるう年の場合は366日で計算される点も考慮しておきましょう。
まとめ
事業資金を調達する際は、単に借りた金額を返済するだけでなく、利息も支払わなければなりません。
利息の負担は金利の影響を受けるため、借入先選びの際は金利にも注意を払いましょう。
「迅速な資金調達を行いたい」という方には、ファクタリングの活用が推奨されます。
ファクタリングは融資ではないため金利は発生しませんが、手数料がかかる点に留意が必要です。
金利が発生しない分、スピーディに資金繰りを改善できる手段として多くの事業者に利用されています。